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セルビア人の醸造家、サントリーニ島に根を下ろしたアメリカ人、ギリシャ人のワイン醸造家、そしてイギリス人のワイン商。ワインで知られる島に集まったこの異色の4人が、2011年にサントリーニ・ブルーイング・カンパニーを設立しました。キクラデス諸島初のマイクロブルワリーの誕生です。
それは、決して容易な時期ではありませんでした。ギリシャは深刻な経済危機のさなかにあり、国内のビール市場では依然として従来型のラガーが主流。サントリーニ島の飲み物といえば、アシルティコを中心とするワインというイメージがすでに定着していました。それでも4人は、そこに新しい可能性を見いだしました。
ボバン・クルニッチは、プロのビール醸造家として技術をもたらしました。マイダ・アンダーソンは、長年暮らしてきた島をよく知る存在。ヤニス・パラスケヴォプロスは、ワイン醸造家でありイエア・ワインズの共同創業者として、すでに知られていました。スティーブ・ダニエルはイギリスのワイン輸入商で、醸造を愛好し、自ら独立系ブルワリーを所有した経験もありました。
4人は、サントリーニ島の歴史的なワイン産地の中心、伝統的なメサ・ゴニア村にある小さな白壁の建物に醸造設備を設置しました。1階には醸造タンクと瓶詰めラインが収まり、その上には村を見渡す小さなテイスティングルームがあります。この簡素な場所から、島で初めての地元産ビール造りが始まりました。
彼らはビールを「ドンキー」と名付けました。ロバは、サントリーニ島の急峻な道と歴史に深く結びついた存在です。イエロー、レッド、クレイジー、ホワイトという小さなドンキーの一群が誕生し、やがて限定品や季節醸造のビールも加わりました。
サントリーニ島でのビール造りには、本土のブルワリーとは異なる難しさがあります。真水が乏しいため、醸造用水には海水を淡水化した水を使用。大麦麦芽は主にドイツとオーストリアから、ホップはスロヴェニア、北米太平洋岸北西部、ニュージーランドなどから調達しています。一回の仕込みに必要なもののほとんどが、まずエーゲ海を渡って島へ運ばれなければなりません。
一次発酵を終えた後、加糖や炭酸ガスの注入を行わず、加圧タンク内で二次発酵させます。炭酸ガスは圧力下で自然に生まれます。ビールは濾過も低温殺菌も行わず、保存料も使用しない「生きたビール」です。
太陽光パネルがブルワリーのエネルギーの一部を担い、麦芽粕などの醸造副産物は肥料として周辺のブドウ畑へ戻されます。若いブルワリーと、それを取り囲む農業の営みを結びつけ、一回の仕込みから生まれたものの一部を再び島のブドウ畑へ返す循環です。
イエロー・ドンキーはブルワリー最初のビールであり、現在も最も広く知られる存在です。その爽やかさと穏やかな苦味が、ドンキービールの個性を形づくりました。
2013年に登場したクレイジー・ドンキーは、ギリシャで初めて造られたIPAです。従来型のラガーが長く主流だった国内市場に、明確に一線を画すスタイルを持ち込みました。
設立から十年以上を経た現在も、サントリーニ・ブルーイング・カンパニーは、あえて小規模なブルワリーであり続けています。そのビールを形づくるのは、国際的な醸造技術と世界各地の原料だけではありません。島で造ることの現実と、周囲に息づくワイン文化もまた、その個性の一部です。メサ・ゴニアのブドウ畑に囲まれて生まれる、フレッシュで無濾過のドンキーたちです。